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結納返しとは

結納返し

古式ゆかしい結婚の作法は、結納に始まります。
男性側から女性側に結納金を添えた品物を贈り、家と家を結びつける婚礼の儀をスタートさせるわけです。
結納返しは、その後、逆に女性側から男性側に贈り物をすること。「袴を購入する資金としてどうぞ」という意味をこめる「袴料」を中心に、現金や品物を贈ります。
ここでは、そんな結納返し・袴料で選ぶべき品物や現金の相場などについてまとめてみました。

結納返しの相場

結納返し・袴料の相場は、現金を包む際には30万円程度が相場とされていますが、地域によって異なります。品物を贈る際の相場は20万円といわれていますが、これも地域によってさまざまです。
ただ、いずれの地域であっても偶数よりは奇数のほうがよりおめでたいといわれています(結納返し・袴料に限らず、ご祝儀にせよ何にせよ、結婚関係のお金は割り切れない奇数がおめでたいとされています)。

さて、「地域によってさまざま」とは、具体的には「関東と関西の違い」を指します。
古来、「東国」と「畿内・西国」は異なる文化圏を持ち、それぞれの価値観をはぐくんできた歴史があります。
そこに由来する違いがあるわけです。

関東式

結納金の半分の額を結納返し・袴料として用意するのが「関東式」というスタイル。文字通り、関東地方を中心とするエリアで古くからしきたりとされているものです。
近年では、「結納金の3割」というのも見られます。
具体的には、関東・東北・北海道・北陸東海の一部などが関東式を基本としているようです。
また、沖縄県もどちらかといえば関東式の結納返し・袴料が多いとされています。

もともと「結納金の半分」とされているのは、関東地方における婚姻のあり方が「両家平等」であったからです。たとえば、平安時代の末期に東海地方の伊豆(静岡県)で結ばれた源頼朝と北条政子の結婚は、恋人同士が将来を誓って手に手を取り合うという意味だけでなく、都で強大な権力を誇った平氏に対抗するために源氏と北条氏が手を結んだという意味合いもこめられていました。
そのような背景から、結納返し・袴料は半分とされてきた歴史があります。

現金の場合

「結納返し・袴料の関東式の相場」というと、反射的に「いくらなのか」と思ってしまいがちですが、具体的な金額よりも関東式ならではの割合を押さえておくことが大切です。
すでに書いたように、関東式の場合、結納返し・袴料は結納金の30~50%が基本。というわけで、まずは「結納金はいくらなのか」ということから考える必要があります。
たとえば、結納金が90万円だった場合には30~45万円といったところでしょう。

品物の場合

結納返しの品物も、相場としては結納の品の30~50%が基本です。
品物は華美にならず、控えめなものが好ましいとされます。
関東式は「両家が五分五分」が基本ではありますが、「女性がお嫁に行く」ということは変わらず、女性側は男性側より控えめなものを用意するのが望ましいとされています。

関西式

文字通り、関西地方を中心とするエリアでは、古くからのしきたりとして結納返し・袴料は「関西式」というスタイルで行われます。具体的には、関西・中国・四国・九州などが関西式を選んでいるようです。
関東式が「両家が五分五分」を基本としているのに対して、関西式は「女性側が男性側に従う」という形態をとります。言い換えれば、婚姻の儀を執り行うに際しては男性側が女性側の面倒を見るということで、お金をより多く出すのは男性側のほうです。
そのことから、結納返し・袴料は、1割程度が相場といわれています。

現金の場合

関西式の結納返し・袴料の現金の相場は、関東式と同じく、金額の相場よりもまずは何割になるのかを考えるのが大切といえます。すでに書いたように1割なので、たとえば結納金が90万円だった場合は9万円程度と考えることができます。
ちなみに、地域によっては「結納返しはしない」というところもあります。

品物の場合

品物を贈る場合も、現金を贈る場合と同様です。
男性側に贈られたものよりも控えめなお返しをすることになります。
また、すでに述べたことではありますが、「品物もあえてお返ししない」という地域もあります。

ただし、関東式・関西式という違いがあるので、「ウチの地域ではこうだから」ということで勝手に決めてしまうのは考えものです。両家の関係にヒビが入ってしまうことも考えられます。
あらかじめ、結納と結納返しをどのように行うか、両家で話し合いを行うようにしましょう。

結納返しの品物について

おめでたいものを並べて贈る結納返しの品物。スルメや昆布といったものがありますが、具体的な内容は関東式と関西式で異なります。
ここでは、その違いについてまとめてみました。

共通の品物

結婚を前に結納/結納返しにおいて両家が贈り合う品物は、それぞれおめでたい意味が込められた食品などですが、関東式と関西式で内容がまったく違うというわけではありません。
共通する「おめでたいもの」があります。
ここでは、そんな共通する品物についてまとめています。

目録

目録とは、結納返しに贈る品物の数々を書き記したものです。ただし、関西式で結納返しをする場合には添えられない場合もあります。品物とは別に贈るとしている地域があるのです。事前に調べておくことをおすすめします。

熨斗(のし)

「熨斗(のし)」といえば、お祝いを包む「熨斗紙」を思い浮かべる方も多いと思いますが、結納返しの場で登場する「熨斗」は、貝のアワビを指します。アワビを引き延ばして乾燥させたものです。
古来、アワビは高級品とされており、長持ちする熨斗タイプのアワビは縁起物とされてきました。
そういう意味をこめて、結納や結納返しの場では品物のひとつとして用意されることになります。

末広(すえひろ)

「末広がり」という縁起のいい言葉が語源になっている「末広(すえひろ)」は、結納返しの品物として贈られる扇子を指します。女性用と男性用、2本の扇子をまとめます。
略式として、後に述べるような品物を除いた「熨斗」「末広」に袴料を添えて贈る場合もあります。
略式セットは8000円ほどで購入することが可能です。

御袴料(おんはかまりょう)

御袴料(袴料)は、結納返しの際に添えられるお金のことを指します。
文字通り、「袴」を購入する代金としてお使いください、という意味をこめるものです。
そもそも結納・結納返しとは古来、結婚式を行うための準備をするために行われた風習でした。
結納では男性側から女性側へ、結婚式に必要な衣服を購入するための代金を贈り、女性側からは婚礼衣装として男性が身につける袴を購入するための代金を贈ったわけです。

関東式

関東式の結納返しは、結納で男性側から贈られるものと同じ品物をそろえるのが一般的です。
ここでは、すでに紹介した関東・関西で共通する品物とは別に、関東式ならではの品物を紹介します。

子生婦(こんぶ)

子生婦(こんぶ)は、文字通り海藻の昆布を品物としたもの。
これを贈るのは、「子生婦(こんぶ)」という言葉の「意味」と「音」に合わせた2つの想いが込められています。
意味としては、文字通りですが「子孫繁栄」を表します。子宝に恵まれますように、という想いをこめているわけです。一方、音としては「よろこんぶ」が語源にあります。結婚をきっかけに喜び多き家庭をつくることができますように、という想いが込められています。

寿留女(するめ)

「寿留女(するめ)」もまた、「子生婦(こんぶ)」と同じくさまざまな意味を込めた品物です。
モノとしては、文字通りイカを乾燥させたスルメですが、長持ちする優れた保存食であることから「夫婦の仲が長持ちしますように」という想いが込められています。特に、「妻は家を守るもの」という価値観が根底にあった時代には、結婚に際して女性はさまざまな期待を背負いました。
家庭において「寿(よろこばしいこと)」が「留(とどまる・長く続く)」ことを願うという意味を込めた品物といえます。

勝男節(かつおぶし)

魚のカツオを干して削った鰹節は、古くから保存食として重宝されてきたものでした。特に、「カツオ=勝男」ということで、武士が出陣する際には鰹節が食卓に並んだという歴史的事実もあります(「勝男武士」と表記されることもあるようです)。
勝男節(かつおぶし)は、まさしく家庭を背負う男性に期待するという想いをこめて結納返しで贈られます。

友白髪(ともしらが)

結納返しで贈られる「友白髪(ともしらが)」は、白い麻糸を束ねたもの。
文字通り、老齢になってくると白くなる髪になぞらえたものです。
そこには、「ともに白髪が生えるまで仲良く過ごしてほしい」という想いがこめられています。
また、「とも」をあえて「友」としているのは、「2人仲よく」という意味をより強めるねらいがあります(地域によっては「共白髪」と表記されることもあります)。

家内喜多留(やなぎだる)

家内喜多留(やなぎだる)は、文字通り「これから作られる家庭が喜び多きものでありますように」「喜びが長く続きますように(とどまりますように)」という意味を込めた品物で、現在ではお金の包みを指します。
そもそも、結納・結納返しで贈られる品物は酒肴(お酒・スルメなどのおつまみ)と婚礼準備用のお金(小袖料・袴料)でした。かつては「柳樽」と呼ばれる樽にお酒を詰めたものですが、現在では形が変わりました。

関西式

関西式の結納返しは、袴料(現金)が相手方の1割、あるいは「何も贈らない」というのが基本です。
しかし、品物を揃えてお返しをする場合もあります。
ここでは、関東式と共通する熨斗、末広などとは別に贈られる関西式ならではの品物についてまとめてみました。

肴料(さかなりょう)

肴(さかな)とは、いわゆる「おつまみ」のことです。つまり、「肴料」とは「おつまみの代金」を指します。
要するにお金を贈るわけです。
肴料は別名「松魚料(まつうおりょう)」とも呼ばれます。
これは、肴の中でも特に「勝男節」の代金という意味合いを込めたものです。
鰹節を削ったところが木の年輪のように見えることから、縁起の良い木である「松」が使われています。

酒料(さけりょう)

「酒料」は、文字通りお酒の代金を意味します。肴料と同じくお金を包んで贈るわけですが、地域によっては「多留料」「家内喜多留料」などと呼ばれることもあります。
家内喜多留(やなぎだる)とは、すでに述べた通り本来は柳樽に入れたお酒を意味する言葉ですが、酒料はその代わりとして贈られるものです。

その他

すでに見てきたように、結納返し・袴料は品物とお金を贈る風習であるわけですが、あえて伝統的な品物や現金ではなく、より現代的なプレゼントが選ばれるケースも多くなっています。
たとえば、スーツや時計、バッグなどが人気です。特に時計はブランド品の腕時計が選ばれているようです。
男性が女性に贈る婚約指輪のお返しという意味が込められているようです。

結納返しの時期

結婚式の前に、男性側から女性側へ品物や現金が贈られる結納。
そして、女性側から男性側へ贈られる結納返し。
かつては、いずれも結婚式の前に行われるのが一般的でした。結婚式を挙げるために、「男性から女性へ着物代を贈り、女性から男性へ袴代を贈る」という意味合いがあったからです。
しかし今、特に結納返しの時期については結納当日、結納後、あるいはすべてが終わったあとの入居後など、人それぞれさまざまです。

当日行う

結婚式の前に「結納日」を決め、男性側から女性側へ結納を行い、その場で女性側から男性側へ結納返しを行う、というパターンがあります。1日でまとめて行うことができるというメリットがあります。
ただし、関西式の場合、基本的に当日に行われることはありません。
「つき返し(同じ品物をすぐ返される=突き返される)」という意味があるとされています。

結納後

関西式を採用している地域では、こちらが一般的です。
結納日と結納返しの日を両家の間で取り決め、日を置いて行います。
結納の品に合わせて結納返しの品を選ぶことができる、という点がメリットといえるでしょう。
とはいえ、互いの実家が離れている場合はなかなか大変です。最近では関東式・関西式に厳密にこだわらなければならないという決まりもないので、事前に両家で話し合っておきましょう。

入居時

結婚式後に結納返しを行う、というパターンもあります。
具体的な時期はさまざまで、たとえば新居に入居したあとで落ち着いてからあらためて結納返しが行われることもありますし、入居日の前日あたりの荷造り日に行われることもあります。
ここでいう「荷造り日」とは、嫁入り道具をまとめる日を指します。最近では同棲から結婚に至るパターンも多いので特に気にする必要はありませんが、実際に女性側が実家から送り出されて新居に入るという場合は、荷造りとの兼ね合いを考えて負担にならないようスケジュールを組む必要があります。

結納返しを断られた場合

プレゼントに対しては、何かしらの返礼をするというのが最低限の礼儀作法です。
たとえば、結納の場合も同じことがいえます。両家の縁をより強く結び、新たにつくられる家庭が末永く幸福なものでありますようにという意味がこもっている結納には、やはり相応の品物をもって応えるのが正しい礼儀といえるでしょう。
ただし、地域によっては絶対に結納返しをしなければならないということはありません。
男性側から、結納返しは不要であると断りを入れられる場合もあります。その場合は、無理やりに贈る必要はありません。

結納返しのマナー

結納返し・袴料は現金を贈るわけですが、その具体的な包み方、渡し方のマナーとはどのようなものなのでしょうか。ここでは、御祝儀袋の選び方や表書きの書き方、正式な渡し方について解説しています。

ご祝儀袋

結納返しの現金を包むご祝儀袋は、「金封」というお祝い用のお金を包む専用の封筒を使います。
水引をかけ、表書きをして贈ります。
この際、水引は「鮑(あわじ)結び」という結び方をするのが一般的です。
「一度きりのよろこび」を表す「結び切り」をより強くしたもので、2人の強い絆を表現しています。

現金の包み方

結納返しの現金を金封に包み、鮑結びの水引をかけたうえで行うのは、表書き。
誰がどういう名目で贈るお金なのかを書き記すわけですが、「誰が」については名字のみを書くのが一般的です。そして「名目」については、「御袴料」あるいは「袴料」と記入します。
ただし、地域によって名目として書くべき事柄はさまざまです。イマイチ何と書いていいかわからないという場合は、「寿」と記しておけば間違いありません。

なお、金封に裸のままのお金を入れるのではなく、必ず「中包み」を使用すべきという点には注意しましょう。
紙で包んで金額を記入し(「金百萬圓也」など、旧字体で書くのが正式なカタチです)、そのうえで金封に入れて水引をかけます。

渡し方

中包みと金封に収め、水引をかけて表書きをして、ついに完成した結納返しの袴料。
このお金の「渡し方」には決まった作法があります。そのままの状態で手にもって渡すのは、どんなにお辞儀していようと笑顔であろうと、非常に失礼とされています。袴料を渡す際には白木の台、あるいは黒塗りの台に載せ、さらには袱紗に包んで出すのが正しいマナーです。
ただし、結納の際に袱紗がかけられていなかった場合には、結納返しの際も袱紗をかける必要はありません。

当日

結納返しの袴料は、白木の台や黒塗りの台に金封を載せ、袱紗をかけ、さらに風呂敷に包んで持っていくのが基本的なマナーといわれています。結納日の当日にお返しする際も、そのようにして持参します。渡す際には風呂敷を取り、うやうやしく差し出し、受け取ってもらいます。

後日

結納日の当日にお返しをする場合も、日を改めて行う場合も、基本的な渡し方のマナーは同じです。
持ち運びの際には風呂敷で包み、相手方にお渡しするときに風呂敷を外します。
金封を載せている台や金封を包んでいる袱紗は持ち帰ることができます。
ただし、載せている台が「白木の台」であった場合は別です。
白木の台とは“色を塗っていない木のままの台”を指しますが、これは「2つとない清純な心」を意味しています。基本的に、何度も繰り返して使うことはできないものなので、持ち帰ることはできません。

結納返しの注意点

伝統にのっとって、あるいは時代に合わせて柔軟に、品物を選び、お金を包んで贈る結納返し。
しかし、知らず知らずのうちにマナーを犯して失礼なことをしてしまっている場合もあるので注意が必要です。
ここでは、気を付けるべき点についてまとめてみました。

気を付けたほうがいいこと

結納返しを行う際に、まず気をつけなければならないのは「男性側よりも控えめな内容にする」ということです。
たとえば、関東式であれ関西式であれ、結納返しで包むお金は結納の際に男性側から贈られる金額よりもかなり少なく設定します(関東式なら3割、関西式なら1割)。同じく、品物も男性側より豪華であっては失礼にあたるとされています。
また、現金を包む際には折れ目のない「新札」を使用すること、奇数が望ましいことなども注意点として挙げられるでしょう。
そのほか、品物とは別に手みやげを持っていくとき、「切れる」に関するものはタブーとされているので注意しましょう。
たとえば、ようかんなどは美味しく上品な感じがするのでついつい手土産にぴったりのような感じがしますが、切らなければ食べられないのでタブーです。

結納返しのおすすめ

熨斗や末広、袴料などといった古式ゆかしい結納返しの品を選ばず、より現代的なプレゼントを選ぶ。そんなカップルも増えています。
これもまた時代の流れであり、決してダメなことではありません。
時計やスーツなどがよく選ばれていますが、基本的には「贈り主があげたいもの」「贈られる人が欲しがっているもの」でOK。これでなければならないという決まりはありません。

結納返しセット

熨斗や末広、袴料、また関東式なら勝男節や寿留女、友白髪など、さまざまなものを合わせて贈らなければならない正式な結納返し。
しかし、いちいちひとつずつ手作業で用意しなければならないというわけではありません。
最近では、専門ショップで「結納返しセット」を購入して贈るというパターンも増えています。贈るべき品物を“全のせ”した豪華版、必要最小限の品物をまとめた略式など、商品はさまざまです。

腕時計

結納返しとは、女性側が男性側に贈るもの。その品物として、「腕時計」が選ばれるケースが増えています。
その理由は、いくつかあります。
たとえば、家庭を持って働く男性の背中を押すという意味合いがあります。
腕時計は実用品であると同時に、“働く男性”のシンボルとして機能するアクセサリーでもあります。
家庭を引っぱっていく頼もしい存在として期待を込めて、腕時計を贈るわけです。
また、ほかにも「長く時を刻んでいきますように」というロマンチックな意味も込められています。

スーツ

腕時計が“働く男性のシンボル”なら、スーツは“働く男性の戦闘服”であるといえます。結婚後には必ず袖を通す機会があるということから、結納返しの品として選ばれています。
また、そのほかにも、古い時代の名残りという側面もあります。
そもそも結納返しは古来、「袴料」を贈るという名目で行われていたものです。
結婚式用の衣装である袴を買うための代金をこれで賄ってください、という意味をこめているわけです。つまり“服代”を贈っているわけです。
しかし、現代人は袴をはきません。
そこで、かわりにスーツを贈るわけです。